ゆるRMムーヴ

今あるもので満足する

11月の終わりに、ひとつのイベントが終わった。
ローゼンメソッドとはなんの関係もない、ブータンの映画を上映するイベントにここ数か月は自分の時間のほとんどを費やし、なぜか急激な勢いで申し込みが殺到し、その対応に追われていた。
こんなにも人が集まるイベントを主催するのは初めてだった。
たいしてその内容を宣伝したわけでもないのに、何が人々を惹きつけたのだろう。

実際に上映してみて、観た人のだれもが、予想していなかった感動と気づきで魂が震えているのがわかった。ストーリーはシンプルで、役者もほとんどが素人、エキサイティングなものはなにもない素朴なローケーション、それらが、先進国の作る大資本の作品にはない、圧倒的な美しさで人々の心にしみ込んでくる。
言葉では表現しきれないほどの透明さ、これほどまでにピュアな人々が現代にもいたのか、と思わせる展開。でもそれが、とても自然なのだ。無理してやっていない。これがこの国の人々にとっては普通のこと。人間として、当たり前のことだった、ということに気づいて、ハッとする。

映画を見た何人かの人が、昔の日本もこんなだったね、とつぶやいていた。自分のことはわきに置いて、周りのこと、皆のことを一番大事に考える。人間であれその他の生き物であれ、我々は皆、大自然の一部であり、自然の与えてくれるものには感謝して、大事に使う。

そうして、必要以上に欲しがらない。今、生きていられることで満足する。
日本がそれを忘れてしまったのは、やはり資本主義の競争社会になってからだろう。
いつも他人を気にして、人よりたくさん、何かをしようとする。
自分にとって何が必要か、ではなく、人より上かどうかで判断する。
これはほんとうに悲しいことだし、ブータンの人にとっては不思議なことだろう。

自然に沿って生きていれば、心と身体は健康でいられるのだ。けれども、身体と魂の声を無視して無理を重ねていくと、そのひずみは身体にたまり、病気になっていく。
必要以上に何かを手に入れなくても、人間は生きていけるように作られている。

映画を見てそのことに気づいてくれた人が増えていけば、この世界はもっと穏やかに生きやすくなるのだろうと思う。
そういうやわらかい世界でこそ、ローゼンの効果が生きてくるのだ。

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